よくみられる皮膚疾患
膿皮症
健康な皮膚にも存在する菌のひとつであるブドウ球菌が、異常に増えたときに起こる皮膚の病気です。
健康な皮膚は常在する細菌に対して一定のバリア機能を備えており、細菌の異常増殖は起こりません。しかし、ほかの皮膚の病気、免疫力の低下、誤ったスキンケアにより、皮膚の抵抗力が失われると細菌が侵入・増殖し病変を形成します
病変が表皮内にかぎられる表在性膿皮症と、もっと深い真皮に起こる深在性膿皮症があります。
健康な皮膚は常在する細菌に対して一定のバリア機能を備えており、細菌の異常増殖は起こりません。しかし、ほかの皮膚の病気、免疫力の低下、誤ったスキンケアにより、皮膚の抵抗力が失われると細菌が侵入・増殖し病変を形成します
病変が表皮内にかぎられる表在性膿皮症と、もっと深い真皮に起こる深在性膿皮症があります。
症状
皮膚の赤み、発疹、フケ、脱毛、痒み、色素沈着、臭いなどが認められます。
検査
病変部から細胞を採取し顕微鏡下で観察し、細菌の増殖や炎症の有無を確認します。
またノミ、ダニ、真菌などの皮膚感染がないか確認します。
またノミ、ダニ、真菌などの皮膚感染がないか確認します。
白血球が細菌を攻撃している(貪食)
ツブツブしているのがブドウ球菌
治療
抗菌薬、外用薬、薬用シャンプーなどから選択して治療を行います
抗菌薬による治療で改善しない場合や再発する場合は、原因菌の薬剤への耐性化や基礎疾患として外部寄生虫症あるいはアレルギーの存在が考えられます。
抗菌薬による治療で改善しない場合や再発する場合は、原因菌の薬剤への耐性化や基礎疾患として外部寄生虫症あるいはアレルギーの存在が考えられます。
マラセチア性皮膚炎
マラセチアとは酵母様真菌といわれるカビの一種です。
正常な動物の皮膚や耳道に少数いるのですが、これが増えすぎると体がベタベタと脂っぽくなり、赤みや痒みを示します。
猫では少ない皮膚病ですが、犬では多く見られ、特に、シーズー、コッカー・スパニエル、パグ、ゴールデンレトリバーが好発犬種です。
正常な動物の皮膚や耳道に少数いるのですが、これが増えすぎると体がベタベタと脂っぽくなり、赤みや痒みを示します。
猫では少ない皮膚病ですが、犬では多く見られ、特に、シーズー、コッカー・スパニエル、パグ、ゴールデンレトリバーが好発犬種です。
症状
特に、皮脂がたまりやすい、わきの下、足の指の間、耳、アゴ、おなか肛門の周りなどに痒み、赤み、色素沈着、苔癬化などが認められることが多いです。
診断
病変部分より皮膚検査、染色を行い、顕微鏡でマラセチアを確認します。
ピーナッツ型の青紫に濃く染まっているのが、「マラセチア」です。
ピーナッツ型の青紫に濃く染まっているのが、「マラセチア」です。
治療
マラセチアに効果のある内服薬、外用薬、シャンプーなどを使用して治療を行います。
またマラセチアが増殖してしまう要因となる基礎疾患(アレルギー、甲状腺機能低下症など)がある場合はそちらの治療も行います。
またマラセチアが増殖してしまう要因となる基礎疾患(アレルギー、甲状腺機能低下症など)がある場合はそちらの治療も行います。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症とは、真菌(カビ)の糸状菌が皮膚の角質層や爪、被毛などの角化細胞に侵入し、増殖することで皮膚症状を引き起こす病気です。
犬や猫に感染するものの中には人に感染するものもあるので、注意が必要です。
犬や猫に感染するものの中には人に感染するものもあるので、注意が必要です。
症状
頭部や耳、前肢や尻尾など体の色々な場所に赤みやフケ、かさぶたを伴う脱毛が認められることが多いです。
検査
抜毛検査、真菌培養検査などにより真菌の検出を行います。
治療
症状に合わせて、内服や外用薬、シャンプー療法により治療を行います。
疥癬
ヒゼンダニというダニが寄生することで激しい痒みが生じる皮膚病です
伝染性がとてもつよく、感染している動物との接触により感染します。
人にも感染することがあるため注意が必要です。特に体の抵抗力の弱くなっていると感染しやすくなります。
伝染性がとてもつよく、感染している動物との接触により感染します。
人にも感染することがあるため注意が必要です。特に体の抵抗力の弱くなっていると感染しやすくなります。
症状
非常に激しい痒み
特に耳の縁、肘、踵、腹部に痒みやフケ、脱毛などがみられる
特に耳の縁、肘、踵、腹部に痒みやフケ、脱毛などがみられる
診断
皮膚掻爬検査
寄生しているヒゼンダニの数が多い場合はこの検査で見つかります。しかし少数の場合でみつからないことも多いため、その場合は試験的に駆虫薬を使い症状が改善するかを診ていく、診断的な治療を行います。
寄生しているヒゼンダニの数が多い場合はこの検査で見つかります。しかし少数の場合でみつからないことも多いため、その場合は試験的に駆虫薬を使い症状が改善するかを診ていく、診断的な治療を行います。
皮膚掻爬検査によってみつかったヒゼンダニ
治療
スポット剤や注射などの駆虫薬でヒゼンダニを駆虫します。
また、再感染や感染拡大を防ぐために環境のお掃除や一緒に暮らしているワンちゃん、ネコちゃんの予防も同時に始めていきます。
また、再感染や感染拡大を防ぐために環境のお掃除や一緒に暮らしているワンちゃん、ネコちゃんの予防も同時に始めていきます。
ニキビダニ症
ニキビダニとは毛包虫とも呼ばれ、動物の毛包内(毛穴)に寄生するダニの一種です。
大きさは0.2~0.3ミリと小さく、生後まもなく母親から感染することが多く、健康な動物の皮膚には常在していますが、体力や免疫力の低下、基礎疾患の存在などが発症に関係していると考えられています。
大きさは0.2~0.3ミリと小さく、生後まもなく母親から感染することが多く、健康な動物の皮膚には常在していますが、体力や免疫力の低下、基礎疾患の存在などが発症に関係していると考えられています。
症状
目と口の周りや四肢の先端に脱毛を起こすことが多く、細菌の二次感染が起こると痒みや潰瘍と伴うことがあります。
診断
病変部位の確認、掻爬(そうは)検査や抜毛検査を行いニキビダニの存在を確認します。
治療
治療には内服やシャンプー療法、二次感染や基礎疾患がある場合にはそれに対する治療も行います。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、主に、環境中の原因物質であるハウスダストや花粉、カビなどがアレルゲンとなって、体内の免疫機構が過剰に反応することで生じる皮膚炎のことです。
生後6ヵ月から3歳くらいでの発症が多く、好発犬種は、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、柴犬、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ゴールデン・レトリーバーなどが挙げられます
生後6ヵ月から3歳くらいでの発症が多く、好発犬種は、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、柴犬、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ゴールデン・レトリーバーなどが挙げられます
症状
顔(目や口、耳周辺)、足先、尻尾、肛門周囲、皮膚の重なる部分(わき、内股、肘、膝の裏側、指や肉球の間)に、強い痒みと炎症が認められます。
痒みによりイヌが舐め壊すことで、脱毛、掻き壊し、皮膚の黒ずみ(色素沈着)がみられます。
痒みによりイヌが舐め壊すことで、脱毛、掻き壊し、皮膚の黒ずみ(色素沈着)がみられます。
脇の認められる色素沈着、脱毛
治療
発症の原因となる環境中のアレルゲンを除去していくとともに、症状に合わせて治療を行います。痒みや炎症を抑制するために抗ヒスタミン剤やアポキル、プレドニゾロンなどを用いることもあります。また一部のアレルゲンに対しては、徐々に体をアレルギー物質に慣らしていく「減感作療法」によって症状の改善が期待できます。その他に皮膚のバリア機能を高めるための不飽和脂肪酸などを含むサプリメントやシャンプー療法も有効です。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎とは、ノミが寄生し、吸血した際にノミの唾液がアレルゲンとなり、アレルギー性皮膚炎を起こすものです。
アレルギー体質のワンちゃんやネコちゃんでは、ノミの寄生が少数でも、ひどい皮膚炎になってしまうことがあります。
ノミが活発化する初夏から初冬にかけての発症、または悪化傾向が認められます。
アレルギー体質のワンちゃんやネコちゃんでは、ノミの寄生が少数でも、ひどい皮膚炎になってしまうことがあります。
ノミが活発化する初夏から初冬にかけての発症、または悪化傾向が認められます。
症状
腰や背中を中心とした下半身などに赤みを伴う激しい痒みや脱毛が認められます。
少数のノミの吸血であっても、激しい痒みが誘導されます。
少数のノミの吸血であっても、激しい痒みが誘導されます。
腰背部の赤みと脱毛
治療
ノミの駆除と並行して、皮膚炎を起こしている場合には、炎症を抑えるための消炎剤、細菌による二次感染があれば抗生物質を併用します。
耳ヒゼンダニ症(耳ダニ)
ミミヒゼンダニというダニが耳の中に寄生することで激しい痒みが生じます。
耳垢や皮膚組織、体液をエサとして成長し、耳の中で卵を産み孵化します。
耳垢や皮膚組織、体液をエサとして成長し、耳の中で卵を産み孵化します。
症状
- 耳を頻繁にかく
- 黒い耳垢が大量にでる
- 耳が臭う
診断
耳鏡で耳の中を見ることや、耳垢を顕微鏡で拡大して耳ダニを確認していきます。
耳垢の中にいた耳ダニ
治療
耳の中を洗浄し、ダニの駆虫剤を使用します。
二次感染が起きている場合には抗生剤を併用します。
二次感染が起きている場合には抗生剤を併用します。